看護学部生シアトルボランティア記

日本で看護を学ぶ大学生が1ヶ月アメリカワシントン州シアトルの高齢者施設でのボランティアの経験とその生活模様を綴るブログです。

アメリカ(ワシントン州)のソーシャルワーカー

今日は施設のソーシャルワーカー(以下SW)に1日ついて仕事を見せていただきました。

私は看護職を目指す前はSWになりたいと思っていました。だから願ってもない機会でした。私の興味は、日本ではあまりこれという定義のない仕事であるSWが、アメリカではどのように機能しているのだろうかということでした。以下学んだことです。

Skilled Nursing Homeは州のSocial Service Departmentの管轄下にあります。そしてそこにはSWの配置が義務づけられています。(介護度が低い他の施設、Adult family homeやAssisted livingはそうではないそうです。)施設は新たに入居者が入る際、また入ってから定期的に州にアセスメントシートを提出する必要があり、医師や看護師等のアセスメントをチェックしてまとめあげたアセスメントシートを作成し、州へレポートするのがSWの仕事です。

SWが人とSocial Serviceを繋げるという概念は日本と同じですが、その他にも3ヶ月に一度の入居者の症状(認知度や身体の状態)についてのアセスメントを州へレポートしたり、その他住宅手当の手続き、医療保険の説明及び選択の補助、延命措置の意思決定の補助、また居住空間のアセスメント(ベッド柵や歩行器等の必要性の報告)も行うそうです。

私がシャドーさせてもらった日は新たな入居者が入居前にカウンセリングの予約をキャンセルしていたということで、その予約の取り直しなども行っていました。このように、レジデントの在宅治療と施設での治療の間をつなぐようなこともしています。

それらの話を聞いて、こちらのSWは日本で言うケアマネージャーとSWと後見制度と事務職のすべてをまとめたようなものだと感じました。

また、仕事中ファイルにあったMedicareの番号の意味や読み方を教わり、(えげつなくたくさんの種類がありました)Medicare、Medicaid、制度、法律について熟知していなければならないことも知りました。

結局日本ではSWでなければできない仕事が明確に定義されていないことが、彼らを生かしきれていない要因なのだと感じました。

こちらのSWの仕事が理解でき、私自身のしばらくの間の謎も解けてなんだかすっきりした1日でした。

レジデントの権利と意思尊重

今日はKeiroで昼食前の投薬時のナースの仕事を見せてもらいました。

彼女は薬の入った大きい鍵付き可動式の引き出しと分厚いファイルを持ち、投薬を行いながらチェックをしていました。ちなみにアメリカではナースか、介護士でも薬を手渡しするライセンスがなければ薬を触ることはできないそうです。

彼女がある居住者のデータを見るために取り出したファイルにはその方の延命処置に関する意見が最初にありました。

前にも書いた通り、それは、万が一のことがあった場合に心肺蘇生をできる限り行うのか、また延命を行うのかどうかを書いたものです。 延命処置を強く望む方であれば投薬もそれなりにきっちりと行わなければなりません。(というのは延命処置の希望とは裏腹に薬を拒否する方もいるため)

とても合理的だと感じました。

 私はPodiatristやDentistへ居住者の方を連れて行ってから気になっていたことがありました。それは、

「なぜそこまであっさりと居住者の意見を聞いてしまうのか。」ということです。

勿論命に関わることや、緊急を要することは例外とされますが、徹底して居住者の意思が尊重されていることが他の皆さんの仕事を見ていて強く感じます。だからと言ってほったらかしでは決してありません。

それら意思の尊重を支えるのに重要や役割を果たしているのが、虐待の定義がはっきりしていることであると思います。その人の意思に反したことを無理強いすることが虐待になるため、何かを無理にさせようとしたりするようなどうしようもない状況を施設内では見かけたことがありません。

言うことを聞かないということは裏を返せば言うことを聞かせようとしている状況があることに気がつきました。

ちなみに施設のお手洗いにも虐待、ネグレクトの報告義務について書かれた紙が貼られています。 それが目につくところに貼られていることは、お見舞いにきたレジデントの家族も安心して大切な人を預けることのできると感じられるのではないだろうかと思いました。

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Dentistの日

今日はSeattle KeiroにDentistの来る日でした。月に2回その日があります。

Podiatristのときと同じく、ボランティアがリストアップされたレジデントを部屋から車いすを押して治療室まで連れて行きました。

中にはかなりConfuseしている方もいて、

歯を診てもらおうと言って治療室へ行く

→目の前にDentistがいるにも関わらず医者がいないと言い部屋に帰る

→医者に診てもらうと言う

→医者がいないと言う

→診てもらうという

という一連の作業を繰り返し、治療室と部屋を4往復した末に疲れたのか結局何も言わなくなってしまいRefuseになることもありました。このような状況でも本人の意思が尊重されるのはすごいなと感じました。

そしてそれに付き添って、認知症の方の治療ってどうしているのだろうと疑問に感じました。

レジデントとのコミュニケーション

Nikkei Manorの方はほぼ日系人なので日本語か英語ができれば話をすることができます。

Seattle Keiroでは色んな方が入居されているので一筋縄に行かないことも多々あります。

特に私はその中でも徘徊の恐れのあるレジデントの生活するエリアに大体いるため、コミュニケーションが言語の問題だけではないことが多くあります。

 すっごく必死で何かを訴えてくれているのですが、全くわからないことも多々あります。その中で一番困るのはトイレです。介護士さんたちも基本的な単語は何カ国語か少し知っています。

また、認知症のせいか日によって日本語だけを話したり、英語だけを話したりする方もいます。

しかし日がたつにつれて、アクティビティや日常の生活の中で、一人一人それぞれの方の特徴がなんとなくわかってきました。歌の時間にとっても幸せそうな顔を見せる方や、不安になりやすい方、スポーツが好きな方、話をするのが大好きな方等色んながいます。

そしてなるべくポジティブな空気を作る大切さをアクティビティのスタッフを見ていて気がつきました。そして単純なことですが笑顔は笑顔を呼ぶのだと日々実感します。

延命措置・治療の選択

こちらでは入居時、入居中に延命措置の意思決定を全ての人に必ず行っています。そしてその意思は必ず尊重され、食事や投薬、治療すべてにそれが影響を受けます。それらのインフォメーションは居住者のファイルに入っているため、常に確認することができます。そして基本的には3ヶ月に1度考えに変化がないか確認をするそうです。

心肺蘇生は、かなりきっちりとするのか、ほどほどにするのか、しないのか、

治療についてはFull treatment、Limit Additional treatment 、Comfort、

の3つからいずれか選ぶことができます。

日本で生活してとにかく長く生かすことを良しとする医療をそれなりに当然だと思っていた私は、生かすための治療がどれだけ高齢者にとって時には身体的、精神的、経済的に負担がかかることなのかということを考えたことがありませんでした。

また、興味深かったのはMedicaid(日本で言う生活保護)を受給している方も平等にFull treatmentを受けるという選択ができるということでした。保険によって受ける医療がとっても厳密に決められている国で、これらの人達がFull Treatmentを選ぶ権利があるということは、やはり弱い立場の人は守られなければならないという絶対的な考えがあることに起因しているのかもしれません。

アメリカの老人ホーム

大きく分けてアメリカには3種類の高齢者用の居宅があるそうです。

1)Retirement Home / Adult Family Home / Senior Apartment

まだまだ元気な方向け。グループでお金を出し合ってひとつの家を買い、そこにお手伝いさんを雇って食事や洗濯をしてもらうようなところもあれば、高齢者専用の大きいアパートメントタイプでそこに入居するものもある。ケアを受ける場合はオプションで有料になったり、それらの制度は施設により様々。

2)Assisted Living

基本的に自立しているが少しの助けが必要な方向け。介護士、看護師がいてケアをうけることができる。Nikkei Manorはこれにあたる。

3)Nursing Home

介護が必要な方向け。だけど日本と違うのは、亡くなるまでそこにいられることが前提というものではないこと。Seattle Keiroはこれにあたる。介護士と看護師が常駐している。

しかし驚いたのは同じ施設に入居していても入っている保険によって受けるケアが違うことや、外部からケアをする人が来たりするレジデントいることです。勿論情報共有のために外部のところとは連絡をとりあっているのですが、とってもややこしい制度だと感じます。

In Service

今日はIn Serviceという研修のある日でした。

ワシントン州の州律で、老人ホーム等の福祉施設はどういった内容の研修をどのような人を対象にして行わなければならないのかが定められているそうです。そのため施設では年にたくさんの研修プログラムが行われているそうです。

今回の研修で話をしたのはソーシャルワーカーでした。そしてこれら研修を全て企画しているのがInfection Control Nurseだそうです。彼女は日本で言う師長さんみたいな感じです。

今日参加したのは1時間程度のもので、テーマは居住者の権利でした。参加者はケアに関わる人たちだけでなく、その施設で働く様々な職種の方で、キッチンの方や掃除の方もです。初めはなぜキッチンの人まで?と思いましたが、考えてみれば彼らも居住者と接するため、それもそうかと感じました。本当はボランティアも3ヶ月に1度その研修をうけなければならないそうです。

これらも州からの監査の対象になるそうで、参加者は皆紙にサインをしていました。